参拝の作法とマナー
お守りの扱い方|複数持ちは神様がケンカする?返納の時期も
複数のお守りを持っても神様がケンカすることはない、と神社本庁の公式サイトや複数の神社が案内しています。神社本庁は、お守りを年末にお焚き上げして新しいものを受けるのを基本としつつ、願いが叶うまで身につけても差し支えないとしています。
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財布の中で気づけば増えているお守り、神棚の隅に置きっぱなしのお守り。「神様同士がケンカするから複数持ちはダメ」、そんな話を聞いたことがある人も多いはずです。けれどこの話は、確認できた資料の範囲でははっきり否定されています。問われているのは数ではなく、一つひとつをどう扱い、いつ手放すかです。
根拠にしたのは、神社本庁(全国の神社を包括する組織)の公式サイトとFAQ、東京都神社庁の解説、複数の神社の公式サイト、国語辞典やコトバンクの記述です。鳥居のくぐり方や二礼二拍手一礼の基本は、参拝の基本作法にまとめています。
お守りとは何か — お神札との違い
神社本庁の公式サイトによれば、神棚に祀るお神札(おふだ)が家全体を守るお札であるのに対し、お守りは常に身につけて神さまのご加護をいただくためのものです。東京都神社庁の説明では、お守りは「お神札を小型化したもの」とされ、どちらも神職が祓いと祈願を済ませ、神霊の御分霊が宿ったものとして扱われます。

起源はさらに古く遡るとされます。古代の人々は、石や骨、鏡や剣といった霊威を持つとされる「呪物」を身につけ、神の力で心身を守ると信じていました。神様の力を身に宿すというこの発想は、おみくじの歴史の「神意を伺う籤」とはまた別の、もっと古い層の信仰にあたります。
その後、姿を変えながら受け継がれます。改訂新版 世界大百科事典によれば、社寺の護符やお札を守袋に入れて胸にかける「懸守(かけまもり)」には平安時代の遺品が残り、中世には衣服の上からかけていたものが、近世に入ると直接肌の上などにつけるようになり、幕末には腕につける腕守も現れました。
精選版日本国語大辞典によると、「守り札」という語の文献上の初出は1688年の浮世草子『好色盛衰記』とされています。今のような巾着型で持ち歩くお守りは、この流れの延長線上で近世にかけて定着していったと考えられますが、いつ今の形に確定したかを示す一次資料までは確認できませんでした。

複数持ちで「神様がケンカする」って本当?
複数のお守りを持つと神様同士がケンカする——この俗説について、J-CASTトレンドが2019年、神社本庁の教化広報センターに直接取材しています。回答はこうでした。「神様のことなので、人間の立場からあれこれ言えることではありませんが、お守りを複数持っていても『神様同士がケンカするということはない』と考えていただいてよろしいかと思います」。ただし「たくさん持っていれば大丈夫」と数に頼る考え方も望ましくない、と釘を刺すことも忘れていません。
個別の神社でも見解は一致していました。石川県の大野湊神社は公式サイトで「神様はケンカしません」と明言し、身に着け続けること、感謝の気持ち、年に一度程度の更新を大切にするよう案内しています。
香川県の丸亀春日神社は、複数持ちは全く問題ないとした上で、日本の神道には「八百万(やおよろず)の神」という考え方があり、神様の世界は本来「和」を尊ぶものだと説明しています。
神社本庁の公式サイトにも、この件を直接扱う記述があります。お守りを解説するページに「八百万神(やおよろずのかみ)という言葉があるように、日本には多くの神さまがいらっしゃいます。神さまは、それぞれのご神徳をもって、協力して私たちを守ってくださるので心配はいりません」と明記されています(2026年8月20日確認)。メディア取材への回答と公式サイトの常設ページ、二つの層で同じ答えが確認できます。

お守りの返納はいつ、どこへ? — 目安は1年
神社本庁の「お神札、お守り」のページは、お守りを年末にお焚き上げして新しいものを受けるのを基本としつつ、願いが叶うまで身につけても差し支えないと案内しています。返納先について産泰神社は、受けた社寺に納めるのを基本とし、遠方なら近くの同じ種類の社寺へ、郵送する場合は事前に連絡して確認するよう説明しています。

なぜ1年なのか。群馬県の産泰神社は、正月に新しい年神様を迎える風習と、神道にある「常若(とこわか)」の考え方——常に新しく、若々しい状態を保つという発想——を理由に挙げています。
小正月(1月15日)に正月飾りとともに古いお神札を焚き上げ、歳神様を天へお送りする「どんど焼き」の行事に合わせて、古いお守りも一緒に納められることが多いようです。清浄な火で神様の力を天へお返しし、感謝を伝えます。お焚き上げには、そういう意味が込められています。
なお「神社のお守りは神社へ、お寺のお守りはお寺へ」という区別は、はっきり案内されていました。稲荷系なら稲荷系の社寺へ、といった系統ごとの返納先まで踏み込んだ公式の説明は、今回確認できた範囲では見当たりませんでした。遠方で受けた神社に戻れない時は、無理をせず、近くの社寺に相談してみるのがよさそうです。
古札納所・お焚き上げ・どんど焼きの違い
返納の仕方を調べると、「古札納所」「お焚き上げ」「どんど焼き」という言葉が並んで出てきます。どれも古いお札やお守りを手放す場面の言葉ですが、指しているものは少しずつ違います。
- 古札納所 — 境内に設けられた、古いお札やお守りを納める場所です。神社本庁は、古いお神札を、それを受けた神社の「古神札納所等」へ納めて、お焚き上げをしていただくよう案内しています。
- お焚き上げ — 神社本庁の用語解説では、古いお神札やお守りなど、不要になった物を神火で焼く行事のことです。
- どんど焼き(とんど焼き)・左義長 — 小正月の火祭りの呼び名です。精選版日本国語大辞典は「どんど焼」を「とんどやき」とも言うとし、改訂新版 世界大百科事典は、一般に1月14日か15日に行い、前年のお札を門松や正月飾りと一緒に焼く行事だと説明しています。
同じ事典によれば、京都に近い地方では「サギチョウ」と呼ぶ土地もあり、全国的には「どんど焼」など「トンド」系統の呼び名が広く使われています。呼び名が違っても、中身は同じ小正月の火祭りです。
関西にも、年間の行事予定にこの日付を載せている神社があります。大阪天満宮は「天満宮の一年」に1月15日のとんど神事を、石切劔箭神社は1月14日のとんど祭を載せています。
石切劔箭神社は、とんど祭を「旧年中に各家に祀られた御神札など」をお焚き上げする祭典と説明し、地方により「どんど」や「左義長」とも呼ばれると書いています(どちらも2026年9月28日確認)。時間や受付の決まりは年によって変わることがあるので、出かける前にその年の案内を確かめてください。
数より、大切にしてきた時間を
複数持っていても、神様はケンカしません。とはいえ、鞄の底で色褪せたまま何年も置き去りにされているお守りがあるなら、一度立ち止まってもいいのかもしれません。賽銭の意味と金額の話と同じく、神様への向き合い方は金額や数字ではなく、込めた気持ちに宿るという考え方が、ここでも通底しています。
一年守ってくれたことへの感謝を胸に、近くの社寺へ納めに行きます。それだけで、お守りとの付き合い方は十分です。
一年見守ってくれたお守りに感謝を込めて。→ 福跡マップで近くの神社を探す
参考・出典
17件出典に基づいて掲載しています
- お守り「複数持ち」でご利益に影響? ソボクな疑問に神社本庁が答えた: J-CAST トレンド
j-cast.com - お守りは複数持つと神様がケンカする?! | 大野湊神社
oonominato.or.jp - 御守りは複数持っても大丈夫?「神様が喧嘩する」という噂の真相と、大切に扱うための心得 - 丸亀春日神社【公式】
marugame-kasugajinja.com - 神社本庁公式サイト
jinjahoncho.or.jp - よくあるご質問(FAQ) | 神社本庁公式サイト
jinjahoncho.or.jp - 【2026年初詣】お守りはいつ・どこに返納すればいい?お守りの意味からお納めの仕方までを神職が解説します | 神社豆知識 | このはな手帖…
santai-jinja.jp - 左義長(どんど)について | 有松天満社公式HP
arimatsu-tenmansha.com - おふだの納め方 | 福島稲荷神社 公式ホームページ
fukushima-inari.com - お神札、お守り | おまいりする | 神社本庁公式サイト
jinjahoncho.or.jp - お神札(おふだ)とお守りの違いについて説明してください | 東京都神社庁【神社の豆知識】
mamechishiki.tokyo - 守り札(マモリフダ)とは? 意味や使い方 - コトバンク
kotobank.jp - 御守(オモリ)とは? 意味や使い方 - コトバンク
kotobank.jp - お神札のまつり方 | おまつりする | 神社本庁公式サイト
jinjahoncho.or.jp - 左義長(サギチョウ)とは? 意味や使い方 - コトバンク
kotobank.jp - どんど焼き(どんどやき)とは? 意味や使い方 - コトバンク
kotobank.jp - 天満宮の一年 | 大阪天満宮
osakatemmangu.or.jp - とんど祭|年間の祭事と行事一覧|石切劔箭神社(石切さん)
ishikiri.or.jp
訂正履歴
公開後に内容を改めた箇所を、日付とともに記録しています。
- :本文の説明の文を6か所、削るか短く改めました。由緒・年代・出典・引用の内容は変えていません。
- :見出し「いつ、どこに返す?」を「お守りの返納はいつ、どこへ?」に改め、「古札納所・お焚き上げ・どんど焼きの違い」の節を新しく設けました。神社本庁の用語解説、辞典(世界大百科事典・精選版日本国語大辞典)、大阪天満宮と石切劔箭神社の行事案内を出典に加えています。既存の記述は変えていません。
- :参考にした資料からWikipediaを外しました。お守りの移り変わりの段落で、Wikipediaにしか根拠がなかった「貴族の女性たちが仏像や経文を収めた懸守を首から下げ」「鎌倉時代には社寺のお守りの存在が確認」「中世に道教のお札を日本流にしたとの説」「江戸時代に首から下げる形は廃れ、腰さげ」「庶民の間で腕守り」を削り、世界大百科事典の「御守」の説明(懸守の平安時代の遺品、近世に肌につける形、幕末の腕守)に改めました。その年表の図も外しています。同日、本文に残った事実だけで図を作り直して戻しました。
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